海野和男著『デジタルカメラによる海野和男の昆虫撮影テクニック』
昆虫写真家・海野和男の、現時点での昆虫撮影テクニックが全て公開。
昆虫写真のためのカメラ選びから、いろいろな昆虫の撮影テクニックまで。
かつて海野和男氏が出していた、昆虫撮影テクニック本『昆虫写真マニュアル』のデジタル版。
本書の【はじめに】からピックアップしてみました。
本書を書いた海野氏の思いと、本書の特徴が分かると思います。
本書【はじめに】より
デジタルカメラ時代になって大幅に撮りやすくなったとはいえ、とはいえ、小さな被写体である昆虫をうまく撮るには、さまざまな技術的なポイントがあります。とくに、レンズ選び、絞りとシャッタースピード、ストロボの使い方は重要です。
本書には、そうした技術的なポイントについてなるべくわかりやすく書きました。また、本書に掲載したほとんどの昆虫写真は最新のデジタルカメラを使ってこの2~3年に撮影したものです。(略)
この本には、ぼくが長年にわたって開発してきた撮影法を惜しまずに盛り込みました。誰でもがチャレンジできる本格的な昆虫撮影法を解説した自信作です。昆虫写真を撮影している人に“プロ並みの写真”を撮れるようになっていただきたいというのが、ぼくの本当の思いです。
2012年1月 海野和男
その他、毎日見ている、海野和男氏のサイト「
海野和男のデジタル昆虫記」の「小諸日記」から、『昆虫撮影テクニック』、『昆虫写真マニュアル』に関する記事を抜き出してみました。
詳しい内容は、最後に記載した目次を見てもらえれば、だいたい把握できるのではないかと思います。
一通り目を通してみると、昆虫撮影をするどのレベルの人が読んでも、参考になりそうだという印象を持ちました。
つまり永久保存版。
昆虫撮影で困ったことがあっても、本書を開けば、たいてい解決するのではないでしょうか。
昆虫撮影という視点で見たデジタルカメラ選びは、これからカメラを買おうとする人にも、かなり参考になると思います。
昆虫撮影の楽しみは、昆虫の写真を撮ること以外にも、観察によって興味深い動きを知ることにもあると思います。
そしてその動きを知って、動きのパターンを読み、撮影に生かせられれば、さらに昆虫撮影が楽しくなるでしょう。
例えば、自分の好きな被写体にハエトリグモがいます。
大きくても体長1cmほどで、家の中を飛び跳ねている小さなクモ。
このクモをマクロ撮影してみると、正面に大きな目玉が二つ並び、その横には小さな目が並んで、クモの気持ち悪さが全くなく、むしろ美しいほどです。
前肢をウニウニ動かして、ちょこまか動き回る姿も愛らしい。
ハエトリグモの美しい写真を見たい方はこちら↓
Jumping Spiders of Oklahoma 自分の持っているカメラで、この小さなクモを撮影するには、レンズを2cmまで近づける必要があります。
しかし、カメラを近づけると、必ずと言っていいほど逃げてしまうのです。
しかし不思議なことに、このクモの前で指を動かすと、動きが止まります。
相手は何だろうと観察しているようにも見えます。
ですから、このクモを撮影するときは、左手の指を動かしつつ、カメラを2cmまでゆっくり近づけて、撮影することが多いです。
そうして撮影した一枚が、これ。
アダンソンエトリグモです。
とにかく動き回って、なかなか撮影させてくれませんでしたが、指をチラチラさせるのが功を奏し、撮影することができました。
ちなみに、ピントは固定し、カメラを前後させて、クモの目にピントがあったところでシャッターをきっています。
ハエトリグモのような小さな生き物をマクロ撮影すると、内蔵ストロボを焚くと、レンズの影が写ってしまいます。
そこで、もう少し上部から光が回るように、自作した「
COOLPIX5000用内蔵ストロボバウンサー」を使っています。
本書にも、【内蔵ストロボを上手に活用する】、【ディフューザーでストロボのケラレを回避する】に、レンズの影が写ってしまうことの回避方法が解説されています。
こういうアクセサリーを自作して、昆虫などがきれいに撮れれば、昆虫撮影の面白さは倍増することでしょう。
目次
- 昆虫撮影に使うデジタルカメラと基礎知識
- いろいろなデジタルカメラ
- デジタル一眼レフカメラの選び方
- ミラーレス一眼カメラの選び方
- コンパクトデジタルカメラの選び方
- 昆虫撮影に重要なイメージセンサーの大きさ
- イメージセンサーの大きさにより写る範囲が異なる
- イメージセンサーが小さいほど被写界深度が深くなる
- イメージセンサーが大きいほど高感度性能に優れる
- コラム カメラバッグ
- 昆虫撮影のためのカメラ操作の基本
- どこにピントを合わせるか
- カメラアングルとフレーミング
- 絞りとシャッターの関係
- 手ぶれを防ぐ
- ISO感度を積極的に変える
- 光の色の条件に応じてWB(ホワイトバランス)を変える
- コラム 三脚
- ズームレンズを使う昆虫のマクロ撮影
- 標準ズームで撮影する 1
- 標準ズームで撮影する 2
- 広角ズーム、広角レンズで撮影する
- 高倍率ズーム、望遠レンズで撮影する
- コラム 外付けストロボ
- マクロレンズを使う本格的なマクロ撮影
- いろいろなマクロレンズ
- レンズの焦点距離による被写界深度と昆虫の写る大きさ
- 焦点距離によってワーキングディスタンスは異なる
- 焦点距離によって背景の写り方が変わる
- 実際のマクロ撮影の基本
- 昆虫の撮影に使いやすい100mmクラスのマクロレンズ
- 小さな昆虫の素顔に迫る高倍率マクロレンズ
- 高倍率マクロレンズの自作
- コラム 昆虫のことをもっとよく知ろう ―食草―
- 魚眼レンズを使う大深度・広角マクロ撮影
- 魚眼レンズ1 ファンタジックな世界を写し出す
- 魚眼レンズ2 アングルを工夫して生息環境を写す
- 魚眼レンズ3 魚眼レンズの最短撮影距離と描写
- テレコンバーターの活用
- ニコンのフルサイズ機ではテレコンバーターを活用しよう
- 超広角レンズと魚眼+テレコンの描写の違い
- ワイドコンバーターの活用
- 魚露目レンズの活用
- コラム 昆虫のことをもっとよく知ろう ―吸密植物―
- ストロボを使いこなす
- ストロボの効果の基本
- ストロボを使った昆虫撮影の基本
- マニュアル露出+ストロボで昆虫の動きを確実に止める
- 内蔵ストロボを上手に活用する
- ディフューザーでストロボ光のケラレを回避する
- クリップオンストロボやマクロストロボの使用上の注意
- ストロボ光と背景光のバランスを考える
- 繊細な光コントロールができるマクロツインフラッシュ
- ストロボを使うか使わないか
- マクロレンズや望遠ズーム撮影でストロボを使う
- 光線状況によって変わるストロボの必要性
- 撮影モードをマニュアルにしてストロボを使う
- 広角レンズや魚眼レンズ撮影でストロボを使う
- 複数のストロボをコードレスで同調発光させる
- 後幕シンクロの活用
- チョウの撮影で学ぶ実践フィールドテクニック
- 望遠ズームでチョウを撮る
- マクロレンズでチョウを撮る
- マクロレンズや望遠ズームで飛んでいるチョウを撮る
- 広角ズームや魚眼レンズでチョウの生息環境を写し込む
- 広角レンズや魚眼レンズで飛んでいるチョウを撮る
- 海野流 チョウの飛翔の撮影
- ハイスピードシンクロでチョウの飛翔を撮る
- チョウの吸水集団を撮る
- チョウのおしっこを撮る
- パスト連射機能で飛んでいるチョウを撮る
- コラム 昆虫の名前を調べるには図鑑を活用
- いろいろな昆虫の撮影テクニック
- トンボを撮る1 止まっているトンボを撮る
- トンボを撮る2 水面の反射を入れてトンボを撮る
- トンボを撮る3 飛んでいるトンボを撮る
- トンボを撮る4 トンボの産卵を撮る
- セミを撮る1 木に止まっているセミを撮る
- セミを撮る2 セミのおしっこを撮る
- セミを撮る3 セミの羽化を撮る
- ミツバチを撮る
- ホタルを撮る1 ホタルの光跡を撮る
- ホタルを撮る2 光っているホタルを撮る
- メタリックな輝きの甲虫を撮る
- テントウムシを撮る
- カミキリムシを撮る
- 昆虫のホバリングを撮る
- カリウドバチを撮る
- バッタのジャンプを撮る
- 鳴く虫の女王 カンタンを撮る
- 昆虫の顔を撮る
- 月をバックに昆虫を撮る
- 夕日を入れて昆虫を撮る